四季折々の植物の話。



仏 / 英 mimosa

2月の半ばを過ぎる頃に、黄色いふわふわとした可憐な花をつけるミモザ。そのやわらかな綿のような花は、長い冬の眠りから、ゆっくりと春へと目覚めていく自然を体現しているよう。フランスでは、ミモザの花は春を運んでくるといわれ、日本人にとっての梅や桜のような存在である。

ミモザにはいくつかの種類があるが、香料として用いられる代表的なものは学名Acacia Decurrens、和名はフサアカシアと呼ばれる。マメ科ネムリグサ属のとげのある常緑高木で、花の開花は2月〜4月頃。枝いっぱいに咲く黄色いボールのような小さな花は香りも強い。主な生産地は南フランスのプロヴァンス、インド、エジプト、モロッコなど。
1865年に、南フランスに初めて香料用の農園ができた。花を収穫し、溶剤抽出法で採取されてコンクリート状の香料となる。香りはリッチフローラル調にグリーンノート、パウダリー、アニスアルデヒド、ハチミツのような甘みとドライな苦みも感じられる。バラやチュベローズ、カーネーション、ジャスミンなどの香りとよく調和する。

ミモザの咲く早春にコート ダジュールの町ではミモザの花祭り、ニースではにカーニバルが開催される。花いっぱいのデコレーションを施した山車が、海沿いの通りを黄色に彩り、芳香を漂わせながら進んでいく。こうして人々はミモザと共に春の訪れを祝う。
パリに届くミモザの花は季節の便り。長く寒さの厳しかった冬がようやく終わりに近づく知らせに、心が躍る。可憐で野性的なその佇まいはパリの人々にも人気がある。

ゲランの歴史に名を刻む香りのひとつ Après l'ondée/アプレロンデ (1902年)は、控えめながらも上品な香りで、発売から一世紀を過ぎた現在もファンの多い香り。雨上がりの陽射しに溢れる森、露にぬれた下草などロマンティックなイメージ。ミモザやアニス、イリスの根などが香る。男性用香水の London for Men/バーバリーのロンドンフォーメン(2006年)は、洗練されたウッディ調の中に、ミモザがアクセントとしてふわりと感じられる個性的な香り。

愛らしい黄色のミモザが香れば、いよいよ待ちに待った春がやってくる。

 

 
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